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豆蔵 × シンプレクス!2社のリーダーが語るScrapboxの組織導入

· #イベントレポート
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Nota Inc.が提供するドキュメント共有サービス「Scrapbox」。

個人利用はもちろん、ビジネスで活用する企業も多く、ユーザーは急速に増えています。

シンプルな機能性だからこそ多様な使い方ができるScrapbox。その利用方法について、カジュアルな情報交換の場となっているのが、Nota Inc.が不定期で開催している「Scrapbox SQUARE TOKYO」です。

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今回登壇してくださったのは、株式会社豆蔵の牟田嘉寿さんと、シンプレクス株式会社の大冨健一さん。

コンサルティングと開発、それぞれの現場でリーダーシップをとってScrapboxの導入を進めた2人のお話から、企業が抱えるドキュメンテーションの課題や、Scrapboxの有効的な活用法、大規模な組織で導入する際のポイントなど、参加者のみなさんとともにさまざまな視点で理解を深めました。

「Scrapbox SQUARE TOKYO #3」登壇者のご紹介

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株式会社豆蔵 牟田嘉寿さん

2008年に株式会社豆蔵へ入社。

大規模基幹システムのフレームワーク策定や、アジャイル・DevOps導入支援といったコンサル業務を経て、2019年4月より執行役員を務める。福岡県出身。

趣味は、ガジェット全般。前々職ではMuchy.comというPalmのレビューサイトを運営していた。

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シンプレクス株式会社 大冨健一さん

2003年に株式会社シンプレクス・テクノロジー(現 シンプレクス株式会社)へ入社。

インターネット取引システム(FX・CFD・BO)のテックリード・運用改善(SRE活動)・プロジェクトマネジャーを務めた。

その後、大手銀行向けシステムのR&Dチームへ移籍し、Scrapboxを研究開発に役立てた。現在は、Genesis EIPの導入チームに所属し、Genesis EIPの活用を支援している。

知られざるScrapbox誕生秘話とは?Nota Inc. CEO 洛西 オープニングトーク

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カンファレンスの幕開けに、Nota Inc. CEOの洛西から参加者のみなさんへご挨拶。

「登壇者お2人のお話から最後の懇親会まで、存分に楽しんでいってください!」

また、最近一新した会社ロゴのデザインについてや、これまで話してこなかったScrapboxの誕生秘話についても語りました。

会社ロゴのデザインを一新!

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つい先日Nota Inc.のロゴデザインを一新した。Scrapboxのコンセプトである「水のように循環すること」を文字の接続で表現。新しいものがたゆまず「生成」されることをイメージしている。

Scrapbox誕生秘話

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もともとScrapboxは、増井(Nota Inc. CTO・Scrapbox発明者)が教授を務める大学の研究室で利用するために考案した。大学生や大学院生が研究に取り組む研究所は、通常の企業よりも人の入れ替わりが激しく、同時に知識も入れ替わってしまう。また、個人の知識レベルにも大きな差がある。そうした環境の中で、知識を共有・継承していくために開発されたScrapboxは、主に2つの機能を有する。

1つ目は、段落ごとに文章のレベルを設定する「アウトライン機能」。これにより、長文ではなく、短い文章を書くことがシステムの仕様上推奨される。そのため、文章構成を熟考してから書き始めるのではなく、言葉の断片だけでも気軽に書くことができる。

2つ目は、重要なワードを[](ブラケット)で囲むことで、同じワードが記載されている別ページを参照できる「リンク機能」。これにより個人個人が書き込んだ断片的な情報が繋がり、研究室全体の知見となる。また、新しく参加する前提知識が少ない人でも、リンク機能で情報の全体像を把握しながら書いていくことができる。

加えてもう1つ、顔のアイコン表示により、複数人で同時に更新する際は議論が楽しくなった。

結果的に、Scrapboxを導入した増井の研究室は知識が蓄積されるためか、卒業してOBとなってからも研究室に関わり続ける人が多い。

Scrapboxは“整理下手”な人のためのツール

Scrapboxは「リテラシーが高い人でないと使えない」と考えている人もいるが、開発者の増井自身、整理が非常に苦手な人間。「整理はできないけどアウトプットは多い」という増井が作ったこのプロダクトは、情報共有のスピード感を重視する多くの企業からご利用いただいている。

社員の自発性を促進。3つの組織課題を解消した豆蔵のScrapbox活用

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オープニングトークに続いて、登壇者2人のお話。

まずはITコンサルティングの企業、株式会社豆蔵(以下、豆蔵)の執行役員、牟田嘉寿さんが壇上に立ちました。

豆蔵でScrapboxを導入したのは2018年の5月。1年と数ヶ月が経過した現在、社員約150名中、90%が利用し、ページ数は3000ページを超えています。

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牟田さんはScrapboxの導入前、3つの組織課題を感じていたのだそう。

豆蔵が抱えていた3つの組織課題

社員にとってやりがいのある案件とのアンマッチ

社員がやりたいことと、実際にアサインされる案件が一致していないことが時折発生していた。また、社員が「こういう仕事をやりたい」というマインドを持っていても、それを表明する場所がなかった。

情報共有の不足

基本的に個人のスキルが高く、問題を自己解決できるため、他の社員に自分の知見を共有したいというマインドがあまりなかった。一人一人が会社の利益に貢献しているが、組織としての繋がりが薄かった。

自分の会社なのに感じる“アウェイ感”

社外に常駐しているコンサルが多く、彼ら・彼女らは社内活動にあまり参加できず、他の案件の状況も共有されていないため、本社に戻っても“アウェイ感”を抱いていた。

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牟田さんの言葉に続き、2018年の7月に豆蔵に入社した中村一也さんも、エンジニアという現場を知る立場として、Scrapboxが社内に浸透する以前のリアルな状況を語ってくれました。

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入社前に凄腕のエンジニアが多く在籍していると聞き、楽しみにしていたが、社内のコミュニケーションが活発でないため、自分が関わる案件以外でどんなエンジニアがいるのかが見えにくかった。

課題解決のために牟田さんはさまざまなツールを検討した結果、Scrapboxを選択。現在のScrapboxの利用方法やそのメリットとは?詳細に紹介してくださいました。

Scrapboxにより「クライアント」「組織」「社員」3者にとって最良な選択ができる組織に

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提案中の案件の情報発信

クライアントに提案中の案件の状況をScrapboxで見られるようにした。営業担当者がヒアリングを行なった際、クライアントがどんな課題を抱えていて、豆蔵に何を期待しているのかをScrapboxに書く。社員達はそのページをリアルタイムで確認できる。これにより、興味のある社員から「この案件を担当させてほしい」と自発的に手が挙がるようになった。

受注した案件のサマリー

受注した案件について、依頼概要や、どんな技術を使ってどのように制作しているのかなど、案件に関わる“メタ情報”をScrapboxに記録するようにした。ページは担当者が週単位で更新する。サマリーとして、全社員がその案件の状況を把握できるようになり、また知見が共有・蓄積されるようになった。

社内活動の見える化

社内で行われている会議や勉強会などの活動をScrapboxページにまとめ、社外に常駐している社員も確認できるようにした。社内活動を見える化することで、社員一人ひとりが常に会社の状況や方針を把握できるようになった。

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情報の透明化を叶える。Scrapboxで理想的な会社運営を実現

企業は、「クライアントが実現したいこと」、「組織として取り組むべきこと」、「社員がやりたいこと」この3つのバランスを常にとりながら、最良な選択をしていく必要がある。Scrapboxを導入することが情報が透明化に繋がり、より良い組織運営が可能になるだろう。

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シンプレクス「コラボレーションハブ」としてのScrapbox活用

豆蔵の牟田さんに続いて、金融業界に特化したITソリューション・サービスを提供するシンプレクス株式会社(以下、シンプレクス)の大冨さんが登壇。

同社は2016年の11月にScrapboxを導入。ミーティングの議事録やタスク管理、To Do管理など、さまざまなシーンで活用しています。

大冨さんは、Scrapboxの気に入っているところを語ったうえで、自社に導入した経験から、企業でScrapboxを導入する際のポイントを解説してくださいました。

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Scrapboxの気に入っているところ

“思考の質”を高めるためのツールとして有効

個人的なメモのような感覚で気軽にアウトプットできる。暗黙知がリンクによって繋がるため、断片的な思考が繋が、深まっていく。

どんなコンテンツも受け入れてくれる

ローカルに保存することが多いメモや、メール・チャットツールなどに書かれる小さなメッセージなど、整っていないコンテンツも書き込むことができる。構造化されていない情報をとにかく放り込むことで、結果的にそこに構造が生まれる。

思考のブックマークとして有効

閃いただけで結晶になっていないような思考を書き留めておくのに適している。放っておくと忘れてしまいそうなアイデアのキーワードだけでも書いておくことで、ページを見返せば自分の中で思考を再開できる。

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「導入期」のヒント

Scrapboxを導入してから約2年半。現在は100名以上がScrapboxを活用しています。当初半年間は3名で使い始め、徐々にアカウントを増やしていったのだそう。大規模組織での利用を見据えた「導入期」のポイントとは?

“中途半端なページ”をたくさん用意しておく

情報の整っていない未完成なページをたくさん準備しておく。初心者がページ一覧をスクロールしながら、何かしら自分が書きたいと思えるタイトルが見つかる状況を作っておく。初心者は興味がある内容や、知見のある内容を更新することで自然とScrapboxの使い方を覚えていく。

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「拡大期」のヒント

導入期の地道な取り組みにより、徐々にScrapboxの活用が拡大。Scrapboxを使い始めた社員に対して、さらに利用を促進するために、導入から半年が経った「拡大期」でも、さまざまな視点で利用者に配慮をしていきました。

リアクションが大事

Scrapboxは読み手を増やすことよりも、書き手を増やすことに意味があるツール。書く人が増えることで、多くの知識が結びつき、新たな思考の発見につながる。書き手を増やすために、まずは書いてくれたことに反応をしてあげることが大切。ページ上でコメントを書き足してあげたり、社内で会ったら「見たよ」と言葉で伝える。これにより、書いた人は、何気ない一文でも読んでもらえているということを自覚し、「また書こう」という気持ちになれる。逆に、いくら書いても反応がないと、書きたいという気持ちが薄れてしまう。

ルールを設けず自由に書いてもらう

使い慣れてくると、表記揺れが気になったり、誰が書いたわかるようにしたくなったり、ルールを設けようと考える人が出てくる。しかし、Scrapboxは思想としてそういった使い方をサポートしていない。また、ルールを設けることで「気軽に書ける」というScrapboxの本来の良さがなくなってしまうため、表記統一などはあまり気にせず自由に書いてもらう。

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多くの人を巻き込むためのコツとは?議論深まるパネルディスカッション

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お二人が登壇したライトニングトークに続いては、Scrapboxエバンジェリストの長沢智治の進行によるパネルディスカッション。

参加者からの質問に対して2人が回答し、さらに議論が深まっていきました。

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中でも「どのように多くの人を巻き込んでいったのか?」という問いに対する答えには、Scrapboxの企業活用におけるヒントが隠されていました。

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シンプレクス

技術的にも思想的にもプロジェクトの中心人物となっているメンバー3人が最初にScrapboxを使い始めた。3人がどんなことを書いているのかに注目が集まり、他のメンバーもページを閲覧するようになっていった。そして、新しく参加するメンバーがページに書き込んだ際は、中心人物の3人が積極的にコメントをした。これにより、Scrapboxは上下関係を気にせずフラットにコミュニケーションができる場として、社内で定着していった。

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豆蔵

 

何もないところから「好きなように使ってください」と言っても誰も書き込んでくれないので、まずは1週間ほどかけて自分で約300ページ作った。ページを増やしたうえで、徐々に社歴の長い先輩や、キーパーソンなど、人選に人選を重ねながら少しずつメンバーに声をかけて巻き込んでいった。

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過去バージョンが表示可能に!Scrapbox開発者トーク

お招きしたお2人のお話をたっぷりと聞いた後は、毎回恒例となっている、Scrapboxの開発者shokaiによるトーク。最近実装した新機能を紹介しました。

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Scrapbox開発の進捗報告

ページの過去のバージョンを表示する「Page History mode」を実装した。プロジェクトメンバーのみ閲覧可能。これにより、変更された場所がわかるようになった。https://scrapbox.io/scrapbox-drinkup/Page_History_mode

自分のページを作成する際、ガイドが表示されるようになった。企業で新人が新規ページを作成する際などに有効で、教える側のインストラクションの工数削減につながる。

スクロール位置の復元が可能になった。前のページに戻った際、スクロール位置が復元される。

iOSを外付けキーボードで操作する際もカーソル移動が可能になった。

Scrapbox、Android版PWAに対応。起動から記事閲覧までネイティブアプリのようにサクサク動作する。オフラインでの記事閲覧も可能。

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「体質」や「思考」までも変える!企業における有意義なScrapbox利用

和やかな雰囲気がありながらも、いい意味での緊張感が立ち込めた今回の「Scrapbox SQUARE TOKYO #3」。

参加者の皆さんは真剣な眼差しでお2人の話に耳を傾けました。

中でも印象的だった言葉を振り返ってみましょう。

豆蔵 牟田さん

エンジニアから「この案件を担当させてほしい」と自発的に手が挙がるようになった。

シンプレクス 大冨さん

断片的な思考が繋がり、深まっていく。ページを見返せば自分の中で思考を再開できる。

2社の事例からもわかる通り、Scrapboxは単なるドキュメントサービスではありません。ときには組織の体質を改善したり、個人の思考にも作用するなど、多くの可能性を秘めたツールなのです。

イベントの最後はNota Inc. CTO増井俊之の乾杯の合図で懇親会!参加者や登壇者、Nota Inc.の社員が思い思いに交流を深めました。

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回を重ねるごとに盛り上がりが増すScrapbox SQUARE。

初参加の方やScrapboxのユーザーでない方も大歓迎です。

これからも積極的に開催していきますので、ぜひお気軽にご参加ください!

(文・写真 下條信吾)