サイトへ戻る

「Scrapbox SQUARE TOKYO ~開発現場の活用会議~」 イベントレポート

2019年1月22日

NOTA Inc.が提供するドキュメント共有サービス「Scrapbox」。

“知のコラボレーションツール”というドキュメンテーションの新しい概念と使いやすさでユーザー数を急速に増やしています。そんなScrapboxは、実際の開発現場では一体どのように使われているのでしょうか?

2018年の12月12日(水)、「Scrapbox SQUARE TOKYO ~開発現場の活用会議~」が開催されました。

Scrapboxのことが気になっているエンジニアやデザイナーに向けたこのカンファレンス。今回は記念すべき第1回目として、開発現場でScrapboxを使う企業の代表者2名をゲストに迎え、その活用方法や導入までのストーリーを伺いました。

会場としてお借りしたのは、ゲストでご登壇くださった高見さんが所属する株式会社FiNC Technologiesの本社。当日は約50名のユーザーが会場に集まりました。

また、カンファレンスは参加者がScrapboxの専用ページに書き込むことで議論に参加できる「参加型ドキュメンテーションスタイル」。登壇者が一方的に喋るのではなく、リアルタイムで更新されるコメントにも相槌を打ち、回答するなど、インタラクティブなコミュニケーションの場となりました。

登壇者紹介

高見浩介
株式会社FiNC Technologies Technical Lead Manager

川合悠太
GMOペパボ株式会社 SUZURI事業部 プロダクトチーム

長沢智治
Nota Inc. Service Evangelism Lead

洛西一周
Nota Inc. CEO

橋本翔
Nota Inc. Scrapbox 開発者

Scrapbox公開から2周年。振り返りとこれから

Scrapboxが2016年の12月16日に公開されてから2年。Nota Inc. は2017年からユーザーへの普及に向けて力を入れ始め、2018年12月時点でユーザー数は6万人、総ページ数は150万ページと拡大しました。2018年8月からは法人向けのサービスをスタート。カンファレンスの冒頭で、Nota Inc. CEOの洛西一周はこれまでを振り返るとともに、改めてScrapboxの価値を語りました。

洛西「Scrapboxは、ログインすると必ず何かを書き込むユーザーが多く、読むだけのユーザーが少ないプラットフォームです。Scrapboxのリンク機能で情報がつながる楽しさを知ると、次は情報を分解することが楽しくなる。これまでは『長く書いた文章をきれいにまとめる』という作業をしていた人が、Scrapboxを使うと『長文を分解して短い文章(情報)をつくる』という思考に変わっていきます。Scrapboxによって起こる『情報』に対するマインドセットの変革。それは現場のコミュニケーションをより深いものにしてくれるのです。」

洛西が語ったScrapbox独自の思考は、開発段階から一貫しています。「スクボ(Scrapbox)はスクボで開発している」と、開発者の橋本翔は、開発の裏側を語りました。

橋本「主に機能設計において、開発者同士のやりとりでScrapboxを使っています。誰かが直感や思いつきで書き込んだ“雑な内容”に対して、知見のある人が加筆・修正することで情報が濃く正確になり、さらにリンクで他の情報と繋がる。開発現場にScrapboxを導入すると、エンジニア個人の役割分担やロードマップを明確に設定しなくても、プロジェクトの青写真に沿って各自何をすべきかが見えてくるという状況が自然に生まれます。」

「ドキュメテーションやコミュニケーションの組織課題を解消したい」Scrapboxを導入した理由

テクノロジーの力で健康寿命を延ばすことをミッションとして、ヘルスケアのプラットフォームを運営する株式会社FiNC Technologies(以下、FiNC)は、2018年6月にScrapboxを導入し、現在アカウント数は200人以上。エンジニアやデザイナー、ジムのメンバーなどさまざまな職種が利用するなか、アクティブユーザーとして日々100ページほどの新規書き込みをしているのが約40名のエンジニアチームです。2018年12月時点で総ページ数は7600ページ。自ら「Scrapboxを愛している」と語る同社Technical Lead Managerの高見浩介さんは、社内でのScrapbox普及活動に尽力しました。

高見「Microsoft Office 365やSlack、Confluence、JIRA Software、Crowiなど、これまでにさまざまなツールをチームで試してきましたが、正直なかなかフィットするものがなく、開発現場においてドキュメンテーションがどうあるべきか、ずっと課題を感じていました。そんな中、個人でScrapboxを見つけて触ってみたらとても使いやすかったんです。それから、部内のドキュメンテーション共有はScrapboxで統一しようと普及活動をはじめました。」

今回高見さんとともに登壇に参加いただいた川合悠太さんは、GMOペパボ株式会社(以下、GMOペパボ)でオリジナルTシャツやグッズを作成・販売できるサービスを展開する「SUZURI」の開発チームに所属しています。SUZURIは川合さん主導のもと、2017年12月にScrapboxを導入。当時はディレクター2人、エンジニア2人、デザイナー1人、リーダー1人という6名体制のなかで、ある課題意識をもっていたそうです。

川合「うちは少人数にも関わらず、チームの雰囲気が悪かったんですよね(笑)。朝会や夕会もやっても集まりが悪く、コミュニケーションや情報共有がうまくできていませんでした。そこで、ぼくがプライベートで使い始めていたScraboxを導入しようと提案して、最初は共同日報として活用するところからスタートしました。」

まずはコアメンバー数名で“文化”をつくる。Scrapboxを開発現場に浸透させるには?

FiNCとSUZURI。事業内容もチームの規模感も異なり、抱える企業課題も違う両社がたどり着いたScrapboxという共通の選択。ビジネスに新しいツールを導入するのはとてもパワーがいることです。高見さんは導入した時のことを振り返りました。

高見「最初は開発チームのエンジニア10名ほどで使い始めました。FAQのページで使い方を解説したり、僕がエバンジェリストのような立場になって、積極的にその魅力を伝えていきました。そこで全員が“どハマり”して、3ヶ月で3200ページも作られたので、これはチーム全体で使うべきだと確信しましたね。やはり最初は5名から10名くらいの規模感で使い始めるのがいいと思います。人数が少なすぎると相互編集の楽しさを感じにくいし、逆に多すぎると“文化”が生まれにくい。共通の課題意識をもつメンバーでスタートするとひとつのテーマでもどんどん議論が深まり、Scrapboxの醍醐味を感じやすいです。また、新しい使い方を発見しながら共有し合うのも楽しかったですね。チーム全体に導入してからは、最初のコアメンバーがエバンジェリストとして、使い方を広めたり、サポート役を担うようになりました。」

高見さんの話を受け、今回モデレーターを務めたScrapboxエバンジェリストの長沢智治は、自身が企業コンサルなども行う立場として、Scrapboxを組織の中で浸透させる際の“ポイント”を解説しました。

長澤「『社内のナレッジ共有ができていない』、『部署間の連携ができていない』といった相談をよく受けますが、多くの企業課題はコミュニケーションによって解決できます。ミーティングの回数を増やすなど、リアルなコミュニケーションの場を作ることがベストだと思いますが、リモートワーカーが多い企業など、物理的に難しい場合に私が提案するのがScrapbox。コミュニケーションを取ろうとする努力は必要ですが、そのうえで手助けするツールとしてScrapboxは有効です。」

手順書・ミーティング・名称大喜利。さまざまなScrapboxの活用方法

機能がシンプルだからこその高い汎用性もScrapboxの魅力。FiNCとSUZURIの2社では、ビジネスからカジュアルなコミュニケーションまで、それぞれ異なる用途でScrapboxを利用しているようです。

川合「共同日報として使い始めてから、今ではありとあらゆるドキュメンテーション共有に使っています。例えば作業の手順書として。作業ログを取っておくと、それがそのまま後で使う人のための手順書になり、書き足されて成長していきます。他には新しい商品を企画するときの“名称大喜利”も盛り上がりますね。それから、最近特に気に入っているのは『エヴァランチ』のページです。毎週参加できるメンバーが集まって、エヴァ(新世紀エヴァンゲリオン)を見ながらランチを食べるんですけど、その感想をScrapboxで書き込むっていう。Scrapboxだと、その場ではあえて言わなかった感想も書けるし、周りはそれに対して反応するのもアリだし、無視するのもアリ。仕事と全然関係ないんですけど、楽しいです(笑)。」

高見「社内で200人規模のミーティングを行うとき、代表者だけが話して他が聞き役に周るという、一方通行な場になっていました。そこで、Scrapboxの専用ページを用意したところ、ページ上で質問や回答などが生まれ、内容の濃い参加型のミーティングに変わりました。」

Scrapboxはリアルなコミュニケーションに代わる?確かな効果と今後の課題

Scrapboxの個人ユーザーとしてスタートし、自社の開発チームに啓蒙していった高見さんと川合さん。実際の効果や、現状感じている課題とは?率直なところを語っていただきました。

高見「これまで使ってきた他のドキュメンーテーションツールに比べて、ドキュメントのページ数が約10倍に増えました。今では開発者を中心に、日々の業務に欠かせないツールになっています。さまざまな効果がある中で、リモートワーカーとのやり取りがスムーズになったというのは発見でした。今までならSkypeで打ち合わせをしていたタイミングで『スクボ見てるので大丈夫です。』と言われたこともあります。Scrapboxはコミュニケーションの促進による生産性の向上だけでなく、人同士の相互理解にも繋がり、“カルチャーづくり”にも有効だったと思います。」

川合「Scrapboxのおかげで雰囲気の悪かった開発チームが徐々にまとまってきたと思います。それは情報の非対称性が解消されたから。以前は1on1で話されたことがその2人以外知らないとか、人によって情報格差がありました。実は今年の9月くらいから事業の拡大に伴って急激にチームの人数が増えたんですけど、それもScrapboxで乗り切ったという感じです。課題としては現状Scrapboxを使っているのがSUZURIの開発チームだけなので、他の事業部との連携ができていないこと。僕としてはエンタープライズ版の導入をしたいと強く思っているんですけど、予算を持っている人を説得するのに苦労しています……。毎日使いながら『この心地良さは間違いない』と実感しているので、将来的には全社的にはGMOペパボで全社的にドキュメンテーション共有をScrapboxで統一できるように、今後も普及活動を続けていきます。」

確かな効果と今後の課題進化を続けるScrapboxに2019年も注目!

参加者が登壇者の話を聞いて質問するだけでなく、Scrapboxの専用ページでも議論が交わされた今回のScrapbox SQUARE。

年末ムードの中、FiNCさんの素敵なオフィスで高揚感溢れるひと時となりました。

そして、公演後はアフターパーティー。Nota Inc.のCTO、増井俊之の乾杯で始まり、参加者の皆さんは思い思いに交流を深めました。次回のScrapbox SQUAREもお楽しみに!

Scrapboxについて

企画書、社内マニュアル、議事録など、チームに必要なドキュメントを共同で瞬時に作成できます。ドキュメント同士を関連性を元に自動で繋げ合い、何千、何万ものドキュメントを管理する苦労から解放してくれることが特徴です。